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文部科学大臣表彰 科学技術賞を受賞 ~海洋環境保全のための衝突安全性に優れた船体用高延性厚鋼板を開発~

当社は、日本製鉄株式会社(以下、日本製鉄)および国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所(以下、海上・港湾・航空技術研究所)とともに開発した「衝突安全性に優れた船体用高延性厚鋼板の開発」で、科学技術に関する開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者に対してその功績を讃える「令和6年度 文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)」を受賞し、4月17日にその表彰式が文部科学省にて開催されました。

当社は、海洋環境を保全するために、より一層の技術開発を推し進めた船舶の建造に邁進して参ります。

左から 山田氏(海上・港湾・航空技術研究所)、市川氏(日本製鉄)、紙田取締役執行役員(今治造船)、大川氏(日本製鉄)

<受賞内容>

(1) 受賞名   : 令和6年度 文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)

(2) 受賞件名 : 衝突安全性に優れた船体用高延性厚鋼板の開発

(3) 受賞者

紙田健二  今治造船 取締役執行役員
山田安平     海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所 海難事故解析センター センター長  
大川鉄平  日本製鉄 技術開発本部 鉄鋼研究所 材料信頼性研究部 主幹研究員
市川和利  日本製鉄 技術開発本部 技術開発企画部 上席主幹
今城大貴  日本製鉄 九州製鉄所 品質管理部 主幹

(4) 概要

 今治造船は、日本製鉄および海上・港湾・航空技術研究所とともに、船舶からの大規模油流出を防止し、海洋環境を保全するために衝突安全性の一層の向上を目指し、衝突安全性に優れた船体用高延性厚鋼板を開発しました(図1)。具体的には、最先端の数値シミュレーション(非線形有限要素法)と大型構造実験を駆使して、従来規則値の1.5倍以上の鋼材の伸びの目標を技術的に示し、その上で、延性向上のための冶金原理を確立し、厚鋼板の製造条件の高度化、量産化を実現しました。

 船側部に高延性厚鋼板を使用すること(図2)により、衝突による超大型原油タンカーなどの油漏洩リスクを低減することを可能にしています。また、高延性厚鋼板は強度・靭性、溶接性などの加工性も従来鋼と同等であるため、造船所の施工負荷は変わりません。

 本技術を採用した船舶は、関係諸機関のご理解も得て、国土交通省告示第356号の「先進船舶」として税制優遇され、また、国際的な入港料減免制度の評価項目に高延性厚鋼板の採用の有無が追加されています。このように社会的、経済的に有益な高延性厚鋼板は、当社建造の超大型原油タンカー、ばら積み運搬船、自動車運搬船等に実装し、日本の海事産業の競争力向上に寄与しています。

図1 伸びの改善と衝突安全性の向上
図2 超大型原油タンカーへの高延性厚鋼板の適用例


日本製鉄 プレスリリース
https://www.nipponsteel.com/news/20240409_100.html

海上・港湾・航空技術研究所 プレスリリース
https://www.nmri.go.jp/news/press/2024/press20240409.html